今回の記事は『ファミリー・ツリー』(2011年、監督:アレクサンダー・ペイン)です。
ジョージ・クルーニーが家族との関係を見つめ直していく悩める父親を演じたコメディ・ドラマ。
コメディといいつつもストーリーは極めて最良であり、アカデミー賞脚色賞、ゴールデン・グローブ作品賞受賞など、高く評価された名作。
ジョージ・クルーニー演じる悩めるナイス・ミドルな父親っぷりは必見。
■内容紹介 ※Movie Walkerより引用 Link
ハワイ・オアフ島。弁護士のマット・キング(ジョージ・クルーニー)は、美しい妻と二人の娘たちを持ち、仕事に粉骨砕身してきて、一見順風満帆な人生を送ってきた。
ところがある日、妻エリザベスがボート事故に遭い、意識不明の重体となる。
10歳の次女スコッティ(アマラ・ミラー)はショックから情緒不安定になり、様々な問題を引き起こす。次女の反抗に、これまで家庭を顧みなかったマットはなすすべもなく手を焼いていた。
さらに、マットはカウアイ島にある先祖代々受け継がれてきた広大な土地を売却するかどうかという問題を抱えていた。売却すれば自然は失われるものの一族に巨額の資金が入り、妻に楽をさせてあげられる。しかしエリザベスは一向に回復せず先行きが見えない。
そんな中、全寮制の学校へ通う長女アレックス(シャイリーン・ウッドリー)の迎えに行ったマットがエリザベスの病状を伝えると、母に対して許せぬ思いのあるアレックスは動揺と相まって、エリザベスが浮気をしていたことを告げてしまう。
ハワイに暮らしていても
人生は<楽>じゃない!
![ファミリー・ツリー]()
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![ファミリー・ツリー]()
■感想
どうにも以前に比べ、週末更新というのをコンスタントにできなくなってる。なんだこれ、甘えか。
残りレビュー数もあと4つで終わりなので、もう少しだけお付き合いを。
それでは感想です。
最良のストーリーだった。最上ではなく最良の。
ジョージ・クルーニーって名優であることは間違いないのですが、これほどまでに親しみやすいイメージを持った俳優って彼ぐらいのものではないか。硬すぎず軽すぎず。何だかとてもいい感じの俳優というイメージだ。
この映画ではそんなジョージ・クルーニーの魅力が如何なく発揮されています。
家族との関係を見つめ直していく悩める父親を、自然な魅力たっぷりに好演しています。
ジョージ・クルーニーが演じる父親マットの家族に対して、主に娘たちに対して厳し過ぎず、かといって決して無責任でもないという父親としての立ち位置で接する役回りは大変に素敵だった。
役柄だけでなく演技の方もまさに名優で、深刻に悩むシーンや悲しみや怒り、戸惑った表情などはとても自然に惹きつけられてしまう。特に妻に最後の別れを告げるシーンは思わず目頭が熱くなってしまった。(お約束のお涙頂戴のセリフでは決してない!)ずきりと感動させられるシーンだ。
脚本、演出も素晴らしい。
冒頭に最上ではなく最良と書いたのは、突き抜けるような衝撃というものではないが、誰しもに間違いなく良いと思わせる良さがこの脚本にはあるからという理由から。
実はかなり重たいテーマを据えた物語であるのに、それほど重苦しくならず、観る者を自然にさわやかに感動させてくれる。
前2作の映画『わが母の記』『別離』は重すぎるので傑作ではあるけどオススメとは言い難いところがある。
(注記:2012年の映画鑑賞順は、…⇒『ももへの手紙』⇒『わが母の記』⇒『別離』⇒『ファミリー・ツリー』⇒『ダーク・シャドウ』⇒『MIB3』⇒『幸せへのキセキ』⇒…という順番だったので。レビューの上げ順はかなり自由にやってます)
けれどこの作品は胸を張ってオススメと断言できる。最初は娘たちとどのように接してよいのか分からなかったマット(ジョージ・クルーニー)が、次第に自然に娘たちとの関係を修復していく展開は良かった。
特に長女のアレックスとマットの関係が良かった。母親の不倫相手という共通の敵(?)前に、父と娘という立場の違いから思いの違いもあったのだろうけど、どこか共感するような感情を抱いて、絆が回復していく脚本は自然でかつ何とも良い。
アレックスの恋人、シドも良い奴だった。最初は失礼で無神経な奴という印象を持ったけれど、実は悲しみを人には見せないという彼の性分が分かるシーンが、作中に1シーンだけ描かれている。(それを父と娘の恋人という微妙な関係のシーンでもってきているのだから演出面の上手さは凄い)
個人的なことは話さないというライトな関係は、アレックスにとって救いになっていたのではと思う。
どんなことでも相手に話せる関係も素敵だとは思うけれど、笑い話にできない悲しみは自分の胸の奥にしまっておく。意外と誰だってそうしてる気がする。
末娘のスコッティに「お母さんはもう目を覚まさない」と知らせるシーンの演出も上手い。このシーンは医者以外のセリフは一切なく、それまで生意気だったスコッティの次第に涙が浮かんでいく表情だけで場面を繋いでいる。字面だけ見るとこの上ない悲しいシーンのように感じるかもしれませんが、実はこのシーンも演出上では突き刺すような悲しみを前面に押し出すようなシーンにはしていない。どこか控えめなのだ。それでもやはりグッと来るような感動で胸がいっぱいになるのは演出面の上手さでしょう。
物語を完璧に最後まで描いてくれているのも良かった。
後半のシーン、並の映画であればどこで切られてもおかしくないエンドポイントがいくつもあったように思う。けれど物語はちゃんと最後の締めまでしっかり描いてくれている。
娘たちと上手くやっていけるのか不安に感じていたマットの心情を思うとあのラストシーンは文句なしに素晴らしいでしょう。
ハワイが舞台の映画って初めて観たように思う。ハワイの風景もまたこの映画の魅力の一つで良かった。
実はこのファミリー・ツリーもそんなに良作の予感はしていなかった。まさかこんなに素敵な作品だとは。ちょっとでも観たいと思った映画なら、観るべきなのだと思わさせられた。
■登場人物ちょいメモ
マット・キング(ジョージ・クルーニー)
…悩める父親。妻がボート事故に遭って重体で入院してしまって以降、2人の娘の面倒を看なければならなくなる。
それまで仕事に追われていたマットは娘たちとの接し方に四苦八苦。おまけに妻の不倫まで発覚してしまう。
アレクサンドラ・キング(シェイリーン・ウッドリー)
…マットの娘。長女。愛称はアレックス。全寮制の学校に通っている。
不倫していた母親に対し許せないという思いがあるがために、重体となった母親のことを素直に悲しめない自分に複雑な感情を深めていく。
そんな時に彼女を支えたのが、この父親とあの恋人だったのは本当に良かったと思う。
スコッティ・キング(アマラ・ミラー)
…マットの娘。10歳になる次女。母親が入院して以来、情緒不安定になり反抗的になる。マットも存分に手を焼く。
このぐらいの年代の子に深刻な事実をどう伝えたら良いのか。マットもそうだが、それは誰にだってわからないことかもしれない。
シド(ニック・クラウス)
…アレックスの恋人。一見いい加減な性格で軽い男に見えるハワイ・ボーイ。しかし実はアレックスのことを素直に心配している優しさを持つ。
軽いとチャラいは違うのだよ。
エリザベス・キング(パトリシア・ヘイスティ)
…マットの妻。ボート事故に遭い、意識不明の重体になる。
やはりその不倫という事実から、観客からは同情的にはなられず、作中セリフもなしという、役柄的にはなかなかあんまりな役。
ジュリー・スピア(ジュディ・グリア)
…エリザベスの不倫相手の妻。夫の変わりに病院に来るなど律儀な女性。
ブライアン・スピアー(マシュー・リラード)
…エリザベスの不倫相手。自分の不倫はバレてないと思っている幸せな間男。実はいろんな人にバレてます。
■予告編
映画データ 題名 ファミリー・ツリー 製作年/製作国 2011年/アメリカ ジャンル ドラマ/コメディ 監督 アレクサンダー・ペイン 出演者 ジョージ・クルーニー
シェイリーン・ウッドリー
アマラ・ミラー
ニック・クラウス
ボー・ブリッジス
ロバート・フォスター
ジュディ・グリア
マシュー・リラード
メアリー・バードソング
ロブ・ヒューベル
パトリシア・ヘイスティ、他 メモ・特記
原作:カウイ・ハート・ヘミングス
アカデミー賞:脚色賞受賞
LA批評家協会賞:作品賞受賞
ゴールデン・グローブ:作品賞・男優賞(G・クルーニー)受賞 おすすめ度★★★★☆(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)
■Link
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ジョージ・クルーニーが家族との関係を見つめ直していく悩める父親を演じたコメディ・ドラマ。
コメディといいつつもストーリーは極めて最良であり、アカデミー賞脚色賞、ゴールデン・グローブ作品賞受賞など、高く評価された名作。
ジョージ・クルーニー演じる悩めるナイス・ミドルな父親っぷりは必見。
■内容紹介 ※Movie Walkerより引用 Link
ハワイ・オアフ島。弁護士のマット・キング(ジョージ・クルーニー)は、美しい妻と二人の娘たちを持ち、仕事に粉骨砕身してきて、一見順風満帆な人生を送ってきた。
ところがある日、妻エリザベスがボート事故に遭い、意識不明の重体となる。
10歳の次女スコッティ(アマラ・ミラー)はショックから情緒不安定になり、様々な問題を引き起こす。次女の反抗に、これまで家庭を顧みなかったマットはなすすべもなく手を焼いていた。
さらに、マットはカウアイ島にある先祖代々受け継がれてきた広大な土地を売却するかどうかという問題を抱えていた。売却すれば自然は失われるものの一族に巨額の資金が入り、妻に楽をさせてあげられる。しかしエリザベスは一向に回復せず先行きが見えない。
そんな中、全寮制の学校へ通う長女アレックス(シャイリーン・ウッドリー)の迎えに行ったマットがエリザベスの病状を伝えると、母に対して許せぬ思いのあるアレックスは動揺と相まって、エリザベスが浮気をしていたことを告げてしまう。
ハワイに暮らしていても
人生は<楽>じゃない!



■感想
どうにも以前に比べ、週末更新というのをコンスタントにできなくなってる。なんだこれ、甘えか。
残りレビュー数もあと4つで終わりなので、もう少しだけお付き合いを。
それでは感想です。
最良のストーリーだった。最上ではなく最良の。
ジョージ・クルーニーって名優であることは間違いないのですが、これほどまでに親しみやすいイメージを持った俳優って彼ぐらいのものではないか。硬すぎず軽すぎず。何だかとてもいい感じの俳優というイメージだ。
この映画ではそんなジョージ・クルーニーの魅力が如何なく発揮されています。
家族との関係を見つめ直していく悩める父親を、自然な魅力たっぷりに好演しています。
ジョージ・クルーニーが演じる父親マットの家族に対して、主に娘たちに対して厳し過ぎず、かといって決して無責任でもないという父親としての立ち位置で接する役回りは大変に素敵だった。
役柄だけでなく演技の方もまさに名優で、深刻に悩むシーンや悲しみや怒り、戸惑った表情などはとても自然に惹きつけられてしまう。特に妻に最後の別れを告げるシーンは思わず目頭が熱くなってしまった。(お約束のお涙頂戴のセリフでは決してない!)ずきりと感動させられるシーンだ。
脚本、演出も素晴らしい。
冒頭に最上ではなく最良と書いたのは、突き抜けるような衝撃というものではないが、誰しもに間違いなく良いと思わせる良さがこの脚本にはあるからという理由から。
実はかなり重たいテーマを据えた物語であるのに、それほど重苦しくならず、観る者を自然にさわやかに感動させてくれる。
前2作の映画『わが母の記』『別離』は重すぎるので傑作ではあるけどオススメとは言い難いところがある。
(注記:2012年の映画鑑賞順は、…⇒『ももへの手紙』⇒『わが母の記』⇒『別離』⇒『ファミリー・ツリー』⇒『ダーク・シャドウ』⇒『MIB3』⇒『幸せへのキセキ』⇒…という順番だったので。レビューの上げ順はかなり自由にやってます)
けれどこの作品は胸を張ってオススメと断言できる。最初は娘たちとどのように接してよいのか分からなかったマット(ジョージ・クルーニー)が、次第に自然に娘たちとの関係を修復していく展開は良かった。
特に長女のアレックスとマットの関係が良かった。母親の不倫相手という共通の敵(?)前に、父と娘という立場の違いから思いの違いもあったのだろうけど、どこか共感するような感情を抱いて、絆が回復していく脚本は自然でかつ何とも良い。
アレックスの恋人、シドも良い奴だった。最初は失礼で無神経な奴という印象を持ったけれど、実は悲しみを人には見せないという彼の性分が分かるシーンが、作中に1シーンだけ描かれている。(それを父と娘の恋人という微妙な関係のシーンでもってきているのだから演出面の上手さは凄い)
個人的なことは話さないというライトな関係は、アレックスにとって救いになっていたのではと思う。
どんなことでも相手に話せる関係も素敵だとは思うけれど、笑い話にできない悲しみは自分の胸の奥にしまっておく。意外と誰だってそうしてる気がする。
末娘のスコッティに「お母さんはもう目を覚まさない」と知らせるシーンの演出も上手い。このシーンは医者以外のセリフは一切なく、それまで生意気だったスコッティの次第に涙が浮かんでいく表情だけで場面を繋いでいる。字面だけ見るとこの上ない悲しいシーンのように感じるかもしれませんが、実はこのシーンも演出上では突き刺すような悲しみを前面に押し出すようなシーンにはしていない。どこか控えめなのだ。それでもやはりグッと来るような感動で胸がいっぱいになるのは演出面の上手さでしょう。
物語を完璧に最後まで描いてくれているのも良かった。
後半のシーン、並の映画であればどこで切られてもおかしくないエンドポイントがいくつもあったように思う。けれど物語はちゃんと最後の締めまでしっかり描いてくれている。
娘たちと上手くやっていけるのか不安に感じていたマットの心情を思うとあのラストシーンは文句なしに素晴らしいでしょう。
ハワイが舞台の映画って初めて観たように思う。ハワイの風景もまたこの映画の魅力の一つで良かった。
実はこのファミリー・ツリーもそんなに良作の予感はしていなかった。まさかこんなに素敵な作品だとは。ちょっとでも観たいと思った映画なら、観るべきなのだと思わさせられた。
■登場人物ちょいメモ
マット・キング(ジョージ・クルーニー)
…悩める父親。妻がボート事故に遭って重体で入院してしまって以降、2人の娘の面倒を看なければならなくなる。
それまで仕事に追われていたマットは娘たちとの接し方に四苦八苦。おまけに妻の不倫まで発覚してしまう。
アレクサンドラ・キング(シェイリーン・ウッドリー)
…マットの娘。長女。愛称はアレックス。全寮制の学校に通っている。
不倫していた母親に対し許せないという思いがあるがために、重体となった母親のことを素直に悲しめない自分に複雑な感情を深めていく。
そんな時に彼女を支えたのが、この父親とあの恋人だったのは本当に良かったと思う。
スコッティ・キング(アマラ・ミラー)
…マットの娘。10歳になる次女。母親が入院して以来、情緒不安定になり反抗的になる。マットも存分に手を焼く。
このぐらいの年代の子に深刻な事実をどう伝えたら良いのか。マットもそうだが、それは誰にだってわからないことかもしれない。
シド(ニック・クラウス)
…アレックスの恋人。一見いい加減な性格で軽い男に見えるハワイ・ボーイ。しかし実はアレックスのことを素直に心配している優しさを持つ。
軽いとチャラいは違うのだよ。
エリザベス・キング(パトリシア・ヘイスティ)
…マットの妻。ボート事故に遭い、意識不明の重体になる。
やはりその不倫という事実から、観客からは同情的にはなられず、作中セリフもなしという、役柄的にはなかなかあんまりな役。
ジュリー・スピア(ジュディ・グリア)
…エリザベスの不倫相手の妻。夫の変わりに病院に来るなど律儀な女性。
ブライアン・スピアー(マシュー・リラード)
…エリザベスの不倫相手。自分の不倫はバレてないと思っている幸せな間男。実はいろんな人にバレてます。
■予告編

シェイリーン・ウッドリー
アマラ・ミラー
ニック・クラウス
ボー・ブリッジス
ロバート・フォスター
ジュディ・グリア
マシュー・リラード
メアリー・バードソング
ロブ・ヒューベル
パトリシア・ヘイスティ、他 メモ・特記




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