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わが母の記(映画)

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今回の記事は『わが母の記』(2011年、監督:原田眞人)です。
文豪・井上靖の自伝的同名小説を役所広司と樹木希林の主演で映画化した感動の家族ドラマ。
子どもの頃に母に捨てられた記憶がトラウマとして残り、母とのわだかまりを抱えたままの主人公が、年老いていく母と向き合った日々を丁寧な筆致で描いていく。
名作であることは間違いないですが、重さも半端じゃないので鑑賞する際はご覚悟を。

■内容紹介 ※Movie Walkerより引用 Link
1959年。小説家の伊上洪作(役所広司)は、父・隼人(三國連太郎)の見舞いに行った湯ヶ島の両親の家から東京の自宅に帰ってくる。
妻の美津(赤間麻里子)、長女の郁子(ミムラ)、二女の紀子(菊池亜希子)が、伊上の新作小説にせっせと検印を捺している。それはベストセラー作家の家族の大切な仕事であったが、三女の琴子(宮崎あおい)の姿はない。自室にこもって夕食にも降りて来ない琴子に不満を募らせる伊上。
深夜、持ち直したかに見えた隼人の訃報が入る。

1960年。父亡き後、伊上の妹・桑子(南果歩)が母・八重(樹木希林)の面倒を見ているが、八重の物忘れはますますひどくなっていく。

1963年。八重の誕生日に、川奈ホテルに集まる一族。伊上のもうひとりの妹・志賀子(キムラ緑子)、夫の明夫(小宮孝泰)、運転手の瀬川(三浦貴大)、秘書の珠代(伊藤久美子)も参加しての盛大なお祝い会。だが、八重の記憶はさらに薄れていた。

たとえ忘れてしまっても、
きっと愛だけが残る。

わが母の記

わが母の記

わが母の記
■感想
はじめに言っておくと、この映画は間違いなく誰しもにも称賛される名作です。
ただし描かれている内容は尋常じゃないぐらいに重い。
残酷とか非人情的とかいう類の話ではなく、あなたの日常に来る悲しみを描いている。
だからより心に直接突き刺さってきて痛い。もし鑑賞するのなら、覚悟してから観た方が良いです。

この映画で描かれている内容は、認知症を抱え年老いていく母との日々。
それを極めて丁寧で繊細、そして自然な筆致で描いている。

主演を演じている役所広司と樹木希林の演技は本当に素晴らしい。
役所広司の母に捨てられたことに対して恨みを抱いている姿と、物忘れが酷くなっていく母を悲しく思う姿、その相反する感情を極めて自然に魅力的に演じています。
樹木希林の母の演技は、もはや演技とは思えないほどの自然さで神がかっています。何という存在感なのだろう。これは日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞受賞も当然と言い切れそうなぐらいの凄さです。

母が自分のことをわかっていない。これは悲しいことだろう。
母が自分のことを捨てたわけではないことがわかってから、母の物忘れはますます酷くなり、死が近づいていく。
また息子を前にして置き去りにした息子を探し続けている。このクライマックスの描写は究極的に悲しい。

観ると心に傷を負う映画かもしれない。
おそらく一定数の年齢を越えた人であれば確実に何か感じいるところのある映画であることは間違いない。
子供の頃は両親を世話することなんて考えもしない。そしてその先に来る別れも考えることはそうはない。
けれどある程度年をとるといずれ来るその時を意識する。
両親との別れはどんな人であれいずれは経験しなくちゃいけない。それがどんな別れになるのかはわからないけれど、その時を思うとキリキリと胸が痛む。今の自分にそれを受け入れる強さはまだない。
こういう映画を観ると、もっと頻繁に実家に帰り親に孝行すべきだという気持ちになる。けれどそういう気持ちは普段の日常生活を送る中で長くは続かない。孝行したいけれど帰ることを億劫に思ういつもの自分のが強くなって、結局休みの日にも帰らない。
きっと後悔するのだろうな。

…後半、ほとんど映画の感想は関係ない個人心情になってる。
基本映画レビューは面白おかしく書きたいものだけれど、面白おかしく書けない作品もある。
『わが母の記』は普段考えることから逃げてる悲しみをえぐる作品。けど間違いなく観ておいて損はない名作です。

■登場人物ちょいメモ
伊上洪作(役所広司)
…小説家。幼少期に実の両親に育てられず、よそに預けられていたことから、自分は母に捨てられたという思いを抱く。
年老い次第に物忘れが激しくなっていく母を前に複雑な気持ちを抱いていく。

八重(樹木希林)
…洪作の母。洪作との間には長きにわたり溝があった。
認知症を患い、物忘れが酷くなっていく。

琴子(宮崎あおい)
…洪作の三女。自分の仕事を手伝うことを強要する父に反発する。
自分の意見をはっきり言う気の強い一面がある。

桑子(南果歩)
…八重の次女。洪作の姉にあたる。東京に在住で、値の張りそうな古道具を見つけては実家に持ち帰る古美術商(自称)。
おしゃべりが大好きな明るい女性。

志賀子(キムラ緑子)
…八重の長女。両親と同居し夫とともに面倒をみている。
日増しに酷くなる八重の物忘れに振り回されながらも、持ち前の明るさと前向きな性格で乗り越えようとする。しかし次第に精神をすり減らしていく。

紀子(菊池亜希子)
…洪作の次女。引っ込み思案で無口。そんなため洪作からは最も心配されている。
しかし終盤の彼女の行動を見るに、こういう人ほど実は思いを決めたら大胆に行動するパワフルさ発揮するのかもしれない…とか思った。

郁子(ミムラ)
…洪作の長女。三姉妹の中では一番のしっかり者。ひとりは弱気で後ろ向き、もう一人は強気で自由気ままという、何かと心配を要する妹たちの面倒を見る。

瀬川(三浦貴大)
…作家志望の編集者。後に洪作の運転手兼秘書になる。極度の緊張症だが、真面目で優しい性格は伊上一家に親しまれ愛称多数。
後に結ばれるXXとの展開は真逆のタイプほど実は相性が良いというベタな恋愛模様へと進む。けどそれはあくまでお互いを補え、魅力を感じる場合に限るのだろうなとか思う。

■予告編


映画データ 題名 わが母の記 製作年/製作国 2011年/日本 ジャンル ドラマ 監督 原田眞人 出演者 役所広司
樹木希林
宮崎あおい
南果歩
キムラ緑子
ミムラ
赤間麻里子
菊池亜希子
三浦貴大
真野恵里菜
三國連太郎、他 メモ・特記 原作:井上靖

日本アカデミー賞:主演女優賞(樹木希林)受賞
モントリオール世界映画祭:審査員特別グランプリ受賞 おすすめ度★★★★☆(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)

■Link
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