今回の記事は『プロメテウス』(2012年、監督:リドリー・スコット)です。
世界的ヒットを記録した「エイリアン」第1作の監督であるリドリー・スコットが、その「エイリアン」と同じ世界観を背景に新たに描いたSFミステリー超大作。
主演はノオミ・ラパス、共演にマイケル・ファスベンダー、シャーリーズ・セロン。
■内容紹介 ※Movie Walkerより引用 Link
エジプトやマヤ、メソポタミアなどの古代遺跡の壁画から、共通するサインが見つかる。
発展した時代も場所も異なるこれら古代遺跡で見つかったサインを、考古学者のエリザベス(ノオミ・ラパス)は人類を創造した知的生命体からの招待状ではないかと分析する。
人類の起源の謎を解くため、エリザベスや恋人ホロウェイ、女性監督官ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)、精巧なアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)ら17名は巨大企業ウェイランド・コーポレーションが建造を手がけた宇宙船プロメテウス号に乗り込み、未踏の惑星を目指して出航する。
2093年、目的の惑星にたどり着いた一行は、砂漠に広がる明らかに人の手により造られた遺跡を見つけ、その奥へと足を踏み入れる。
しかしその惑星では地球の科学では計り知れない異常な出来事が次々と起こり、脅威となって彼らに襲いかかる……。
人類は どこから 来たのか。
人類最大の謎、それは“人類の起源”――
![プロメテウス]()
![プロメテウス]()
![プロメテウス]()
![プロメテウス]()
■感想
もういまとなってはネタバレどうこうという事柄ではないと思うので書いてしまいますが、『プロメテウス』は「エイリアン」第1作に繋がる世界観の物語として終結します。
最近の映画タイトルづけの流行りに乗っかれば、エイリアン ジェネシス(創世記)なんてタイトルが付けられていたとしても、それほどおかしくはない。
ただし作中においては、プロメテウスの物語がエイリアンに続く話だということは明確には語られていない。なのでプロメテウスとエイリアンは全く別物の話だということも十分あり得る。けれど、プロメテウスの物語終盤で登場するあの異形の生物はどう考えてもエイリアンにしか思えないのである。
この辺りの繋がりは観客に委ねる形とはなっているけれど、暗黙の事実としてプロメテウス=エイリアンは繋がる物語と考えて問題は無いのではと思う。
『プロメテウス』の雰囲気は、リドリー・スコット版「エイリアン」に近い部分が多々見られる。
エイリアンが完全に宇宙船内だけという閉鎖空間における恐怖を描いたホラーだったように、プロメテウスでも限定された空間における恐怖を描いた内容だった印象が強い。
プロメテウスではエイリアンに比べるとはるかに広大な惑星を舞台とはしているけれど、実質的にはプロメテウス号船内と、謎のピラミッド構造体だけが主要舞台なので意外とエイリアンのような閉鎖空間的な印象が強い。
女性が強い。これも「エイリアン」と極めて似ている。
「エイリアン」のシガーニー・ウィーヴァーは強い女性として強烈な印象を残しましたが、「プロメテウス」の主人公エリザベスも強い女性という印象が強く残る。一部のシーンでは完全にオリジナルのエイリアンの場面をフィーチャーしている演出がされており、「エイリアン」を見たことある人ならきっとニヤリとします。
エリザベスを演じていたのがノオミ・ラパスだったというのが少しびっくり。どうしてもミレニアムシリーズのリスベットのパンクなイメージがあって個性的な女優さんというイメージが強かったので、プロメテウスの戦う女性科学書という役柄は新鮮だった。印象が全然違うので演技の幅が広い女優さんだなと感心してしまう。
ちなみに映画のラスト、ネタバレになるので肝心な部分は伏せますが、恋人の仇である??と協力関係を結ぶ姿に「切り替え早ぇー」と思ってしまいましたが、実はこれ、小説版のラストではまた印象が違う。
小説版ではエリザベスは??に対して強い憎しみを抱いたまま、??と協力する道を選ぶ。おそらくこちらの方が彼女の気持ちとしては正しい姿だと思う。
映画の方が視覚的に凄く壮大だけど、字数が割ける小説の方が丁寧に描けて分かりやすいのは致し方ないこと。映画では映像・演出・表情といった情報から観客が真意を想像しなくてはいけない。それが初見だけだとなかなか難しいのだ。
(それをいかにしっかり伝えられるかが監督の腕の見せ所だとも言えますが…)
不気味なアンドロイド。これもプロメテウス=エイリアンで共通。
エイリアンのアンドロイドが誰かはネタバレなので書きませんが、プロメテウスではデヴィッドがアンドロイドとして登場する。それも人間そっくりなアンドロイドとして。
何を考えているのかが分からず何とも不気味。敵なのか味方なのかが曖昧で、味方だったとしても彼の感情の入らない機械的な思考は人間にとっては不気味に感じられるもの。
しかもデヴィッドは人間に憧れているという一面があり、人間の真似をしている素振りが多く見られるのだけれど、それがことごとく不気味。何か違うのだ。人間とは。
そしてプロメテウスではもう一人、アンドロイド疑惑が浮かぶ人がいる。それがシャーリーズ・セロンが演じたヴィッカーズ。
不気味さとミステリアスさではデヴィッドに次ぐ人物。
彼女が人間なのかアンドロイドなのかは作中では語られず観客に委ねられる形となっています。
僕個人の想像としては彼女は人間とアンドロイドの半々だと思いますね。
デヴィッドとの違いは、デヴィッドはゼロから作られた100%アンドロイドなのに対して、ヴィッカーズには原型となった人間がいる。それがピーター・ウェイランドの娘であり、彼女はその娘のメモリー(記憶)を継いでいるアンドロイド。…なんて想像をしてみる。
造形美。これはプロメテウスでは意識的にエイリアンに似せています。
もちろん時代が進んで、映画技術も進歩しているので、プロメテウスの造形デザインは格段に近代的、より未来的にはなっています。そんな中でも至る所にエイリアンっぽい造形物がちらほら。終盤にエイリアンベビーが出てくる当たりはその極みでしょう。
そしてグローい…。
エイリアンと決定的に違うのが、プロメテウスでは人類の起源という神秘的なテーマを大下敷きにしている所。
そのおかげで何とも神秘的で壮大な雰囲気がプロメテウスには加味されている。
ただとにかく曖昧に描いているので、もの凄く謎が残る。
エンジニア、彼らは一体何だったのか。何ともよく分からないモヤモヤ感が残ります。人間が彼らの意図した存在として生まれたわけではなかったことは何となく分かります。
だとしてもオープニングのあれは何? 事故? 自滅? 自殺? 陰謀? 謎だ…。
■登場人物ちょいメモ
エリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)
…主人公の女科学者。専攻は考古学の模様。チャーリーとは恋人関係。
人類の起源、人類の創造主へと繋がるとプロメテウス号の計画に意欲を燃やす。
終盤のおけるパワフル感はさすがはリドリー・スコット版エイリアン世界のヒロイン。
デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)
…人間そっくりな精巧なアンドロイド。人間に忠実なようで裏で何かしている。
かなり怪しげな行動が目立つが、それはウェイランド社長に忠実だっただけかもしれない。
ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)
…プロメテウス号の女性監督官。ウェイランド社の重役っぽくウェイランド社長の娘。冷徹。
前述した通り、アンドロイド疑惑が色濃く浮かぶ人物。最後はちょっと酷いんですけど。
ヤネック船長(イドリス・エルバ)
…プロメテウス号の船長。科学者たちとは異なる価値観を持ち、目的意識は薄め。
それ故か何かみんな(科学者たち)からは嫌われている模様。ラストは「艦長ーー!」です。
チャーリー・ホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)
…エリザベスの公私共のパートナー。その最後はかなり無残。
エイリアンシリーズの男性陣の死に方は酷い。
ピーター・ウェイランド(ガイ・ピアース)
…ウェイランド社の創業者・CEO。かなりの高齢でプロメテウス計画のスポンサー。
プロメテウス号が地球から出発する時点において既に死亡していると伝えられていたが…。
エンジニア
…人類の創造主として描かれる謎の存在。その目的や生態、彼ら自身の起源は不明。
創造主をエンジニア(技師)という名前で描いている所に何らかの監督の意図を感じる。
別名、バイオハザードシリーズの白いタイラント。意外なほどに筋骨たくましい。
…で何故そこからエイリアンに繋がるのか。謎しか残らない。
■予告編
映画データ 題名 プロメテウス 製作年/製作国 2012年/アメリカ ジャンル SF/アクション/サスペンス 監督 リドリー・スコット 出演者 ノオミ・ラパス
マイケル・ファスベンダー
シャーリーズ・セロン
イドリス・エルバ
ガイ・ピアース
ローガン・マーシャル=グリーン
ショーン・ハリス
レイフ・スポール
イーモン・エリオット
ベネディクト・ウォン
ケイト・ディッキー
パトリック・ウィルソン、他 メモ・特記
PG12 おすすめ度★★★☆(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)
■Link
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世界的ヒットを記録した「エイリアン」第1作の監督であるリドリー・スコットが、その「エイリアン」と同じ世界観を背景に新たに描いたSFミステリー超大作。
主演はノオミ・ラパス、共演にマイケル・ファスベンダー、シャーリーズ・セロン。
■内容紹介 ※Movie Walkerより引用 Link
エジプトやマヤ、メソポタミアなどの古代遺跡の壁画から、共通するサインが見つかる。
発展した時代も場所も異なるこれら古代遺跡で見つかったサインを、考古学者のエリザベス(ノオミ・ラパス)は人類を創造した知的生命体からの招待状ではないかと分析する。
人類の起源の謎を解くため、エリザベスや恋人ホロウェイ、女性監督官ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)、精巧なアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)ら17名は巨大企業ウェイランド・コーポレーションが建造を手がけた宇宙船プロメテウス号に乗り込み、未踏の惑星を目指して出航する。
2093年、目的の惑星にたどり着いた一行は、砂漠に広がる明らかに人の手により造られた遺跡を見つけ、その奥へと足を踏み入れる。
しかしその惑星では地球の科学では計り知れない異常な出来事が次々と起こり、脅威となって彼らに襲いかかる……。
人類は どこから 来たのか。
人類最大の謎、それは“人類の起源”――




■感想
もういまとなってはネタバレどうこうという事柄ではないと思うので書いてしまいますが、『プロメテウス』は「エイリアン」第1作に繋がる世界観の物語として終結します。
最近の映画タイトルづけの流行りに乗っかれば、エイリアン ジェネシス(創世記)なんてタイトルが付けられていたとしても、それほどおかしくはない。
ただし作中においては、プロメテウスの物語がエイリアンに続く話だということは明確には語られていない。なのでプロメテウスとエイリアンは全く別物の話だということも十分あり得る。けれど、プロメテウスの物語終盤で登場するあの異形の生物はどう考えてもエイリアンにしか思えないのである。
この辺りの繋がりは観客に委ねる形とはなっているけれど、暗黙の事実としてプロメテウス=エイリアンは繋がる物語と考えて問題は無いのではと思う。
『プロメテウス』の雰囲気は、リドリー・スコット版「エイリアン」に近い部分が多々見られる。
エイリアンが完全に宇宙船内だけという閉鎖空間における恐怖を描いたホラーだったように、プロメテウスでも限定された空間における恐怖を描いた内容だった印象が強い。
プロメテウスではエイリアンに比べるとはるかに広大な惑星を舞台とはしているけれど、実質的にはプロメテウス号船内と、謎のピラミッド構造体だけが主要舞台なので意外とエイリアンのような閉鎖空間的な印象が強い。
女性が強い。これも「エイリアン」と極めて似ている。
「エイリアン」のシガーニー・ウィーヴァーは強い女性として強烈な印象を残しましたが、「プロメテウス」の主人公エリザベスも強い女性という印象が強く残る。一部のシーンでは完全にオリジナルのエイリアンの場面をフィーチャーしている演出がされており、「エイリアン」を見たことある人ならきっとニヤリとします。
エリザベスを演じていたのがノオミ・ラパスだったというのが少しびっくり。どうしてもミレニアムシリーズのリスベットのパンクなイメージがあって個性的な女優さんというイメージが強かったので、プロメテウスの戦う女性科学書という役柄は新鮮だった。印象が全然違うので演技の幅が広い女優さんだなと感心してしまう。
ちなみに映画のラスト、ネタバレになるので肝心な部分は伏せますが、恋人の仇である??と協力関係を結ぶ姿に「切り替え早ぇー」と思ってしまいましたが、実はこれ、小説版のラストではまた印象が違う。
小説版ではエリザベスは??に対して強い憎しみを抱いたまま、??と協力する道を選ぶ。おそらくこちらの方が彼女の気持ちとしては正しい姿だと思う。
映画の方が視覚的に凄く壮大だけど、字数が割ける小説の方が丁寧に描けて分かりやすいのは致し方ないこと。映画では映像・演出・表情といった情報から観客が真意を想像しなくてはいけない。それが初見だけだとなかなか難しいのだ。
(それをいかにしっかり伝えられるかが監督の腕の見せ所だとも言えますが…)
不気味なアンドロイド。これもプロメテウス=エイリアンで共通。
エイリアンのアンドロイドが誰かはネタバレなので書きませんが、プロメテウスではデヴィッドがアンドロイドとして登場する。それも人間そっくりなアンドロイドとして。
何を考えているのかが分からず何とも不気味。敵なのか味方なのかが曖昧で、味方だったとしても彼の感情の入らない機械的な思考は人間にとっては不気味に感じられるもの。
しかもデヴィッドは人間に憧れているという一面があり、人間の真似をしている素振りが多く見られるのだけれど、それがことごとく不気味。何か違うのだ。人間とは。
そしてプロメテウスではもう一人、アンドロイド疑惑が浮かぶ人がいる。それがシャーリーズ・セロンが演じたヴィッカーズ。
不気味さとミステリアスさではデヴィッドに次ぐ人物。
彼女が人間なのかアンドロイドなのかは作中では語られず観客に委ねられる形となっています。
僕個人の想像としては彼女は人間とアンドロイドの半々だと思いますね。
デヴィッドとの違いは、デヴィッドはゼロから作られた100%アンドロイドなのに対して、ヴィッカーズには原型となった人間がいる。それがピーター・ウェイランドの娘であり、彼女はその娘のメモリー(記憶)を継いでいるアンドロイド。…なんて想像をしてみる。
造形美。これはプロメテウスでは意識的にエイリアンに似せています。
もちろん時代が進んで、映画技術も進歩しているので、プロメテウスの造形デザインは格段に近代的、より未来的にはなっています。そんな中でも至る所にエイリアンっぽい造形物がちらほら。終盤にエイリアンベビーが出てくる当たりはその極みでしょう。
そしてグローい…。
エイリアンと決定的に違うのが、プロメテウスでは人類の起源という神秘的なテーマを大下敷きにしている所。
そのおかげで何とも神秘的で壮大な雰囲気がプロメテウスには加味されている。
ただとにかく曖昧に描いているので、もの凄く謎が残る。
エンジニア、彼らは一体何だったのか。何ともよく分からないモヤモヤ感が残ります。人間が彼らの意図した存在として生まれたわけではなかったことは何となく分かります。
だとしてもオープニングのあれは何? 事故? 自滅? 自殺? 陰謀? 謎だ…。
■登場人物ちょいメモ
エリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)
…主人公の女科学者。専攻は考古学の模様。チャーリーとは恋人関係。
人類の起源、人類の創造主へと繋がるとプロメテウス号の計画に意欲を燃やす。
終盤のおけるパワフル感はさすがはリドリー・スコット版エイリアン世界のヒロイン。
デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)
…人間そっくりな精巧なアンドロイド。人間に忠実なようで裏で何かしている。
かなり怪しげな行動が目立つが、それはウェイランド社長に忠実だっただけかもしれない。
ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)
…プロメテウス号の女性監督官。ウェイランド社の重役っぽくウェイランド社長の娘。冷徹。
前述した通り、アンドロイド疑惑が色濃く浮かぶ人物。最後はちょっと酷いんですけど。
ヤネック船長(イドリス・エルバ)
…プロメテウス号の船長。科学者たちとは異なる価値観を持ち、目的意識は薄め。
それ故か何かみんな(科学者たち)からは嫌われている模様。ラストは「艦長ーー!」です。
チャーリー・ホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)
…エリザベスの公私共のパートナー。その最後はかなり無残。
エイリアンシリーズの男性陣の死に方は酷い。
ピーター・ウェイランド(ガイ・ピアース)
…ウェイランド社の創業者・CEO。かなりの高齢でプロメテウス計画のスポンサー。
プロメテウス号が地球から出発する時点において既に死亡していると伝えられていたが…。
エンジニア
…人類の創造主として描かれる謎の存在。その目的や生態、彼ら自身の起源は不明。
創造主をエンジニア(技師)という名前で描いている所に何らかの監督の意図を感じる。
別名、バイオハザードシリーズの白いタイラント。意外なほどに筋骨たくましい。
…で何故そこからエイリアンに繋がるのか。謎しか残らない。
■予告編

マイケル・ファスベンダー
シャーリーズ・セロン
イドリス・エルバ
ガイ・ピアース
ローガン・マーシャル=グリーン
ショーン・ハリス
レイフ・スポール
イーモン・エリオット
ベネディクト・ウォン
ケイト・ディッキー
パトリック・ウィルソン、他 メモ・特記

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